群馬大学医学部附属病院泌尿器科での主な診療疾患と診断方法です。
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前立腺
最近我が国で増加している前立腺癌をはじめとして、前立腺肥大症、前立腺炎の診断・治療をおこなっています。前立腺癌診断については、前立腺特異抗原(PSA)値・超音波検査・直腸診所見をもとに、年齢と前立腺重量を加味した多数箇所生検によって癌の診断を行っております。癌が発見された場合には、画像診断技術を併用してより正確な病期診断を行い、個々の病状に合わせて、ホルモン療法、手術(前立腺全摘術)、放射線療法を単独、あるいは組み合わせておこなっています。
年間約300名の新規前立腺癌患者さんが来院され、適した治療を患者さんと医療者で検討の上、行います。前立腺全摘術は尿失禁の少ない、10日以内での短期間入院での治療を目指しております。放射線療法は、組織内照射療法(ヨード125密封小線源療法、高線量率小線源療法)や強度変調放射線治療(IMRT)が可能な施設であるほか、近年、重粒子線治療も導入されております。切らない治療として、直腸出血などの少ないQOLを保つ治療を目指しております。全身療法としてホルモン療法に加えてタキソテールを中心とした化学療法も積極的に行っております。
前立腺肥大症手術ではレーザーによる前立腺核出術(HoLEP)を行っております。
<前立腺癌に対する新規薬剤の治験について>
前立腺癌は男性ホルモンによって増殖する癌であるため、ホルモン療法が行われています。初期には90%以上の患者さんに効果が認められます。しかし、進行している場合には、初期のホルモン療法が効かなくなってくる場合がしばしばあります。そのような患者さんに対して日本ではタキソテールによる治療を行います。一方、欧米では新しいホルモン製剤や抗癌剤の開発が先行しており、実際に認可され臨床で用いられています。残念ながら日本ではまだ開発段階です。群馬大学泌尿器科は群馬県で唯一、こうした新規薬剤の複数の開発試験に参加しています。一般的な治療で進行してしまったので、次の治療の方法はあるのか、など、このような場合に、適した選択肢が見つかる可能性もあります。主治医に相談していただき、紹介していただくことも治療の可能性を広げることにつながります。現在下記の治験を実施・予定しております。
• 初回ホルモン療法に関する治験(1件、さらに今後1件予定)
• ホルモンが効かなくなってきた患者さんに対するホルモン療法の治験:
タキソテール前(1件、さらに今後1件予定)タキソテール後(2件、さらに今後1件予定)
• ホルモンが効かなくなってきた患者さんに対する分子標的薬の治験(1件)
• タキソテール後の化学療法の治験(1件)
<限局性-局所進行性前立腺癌(病期I−Ⅲ)に対する重粒子線(炭素イオン線)治療>
群馬大学では、限局性前立腺癌に対する手術療法、低リスク前立腺癌に対するI125密封小線源永久挿入療法、中高リスク前立腺癌および局所進行性前立腺癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)、高線量率組織内照射(外照射併用)を行ってきました。
2008年10月、群馬大学医学部附属病院敷地内に重粒子線(炭素イオン線)照射施設の建屋が完成し、2010年3月16日から実際の癌治療を開始しています。
最も良い適応の疾患としては、限局性-局所進行性前立腺癌(病期I-Ⅲ)であるため、全ての重粒子線治療のうち70-80%が前立腺癌に対する治療が行われています。
2010年6月1日からは先進医療の承認を得て治療を行っています。
[重粒子線治療の特徴]
通常のX線と比べて生物学的効果比(RBE)が高いため、X線には抵抗性を示す様な腫瘍に対しても高い抗腫瘍効果が発揮されることが期待されています。また、通常行われている高エネルギーX線は、人体を透過するのに対し、重粒子線は止めたい深さで止めることが可能です。従って周囲正常組織への線量を低く抑えることが可能であり、副作用の軽減が期待できます。
詳細については http://hospital.med.gunma-u.ac.jp/heavy-ion.htmlをご覧下さい。
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膀胱腫瘍
膀胱癌は泌尿器系の癌の中で前立腺癌に次いで頻度の高い癌です。初期の症状として血尿がみられる事が多く、徐々に頻尿や排尿時痛などの症状も起こすことがあります。
膀胱癌は治療法から大きく2つに分けることが可能です。内視鏡的切除が可能な非筋層浸潤癌と膀胱摘出手術や抗癌剤治療が必要な筋層浸潤癌です。初診の患者さんに内視鏡、CTスキャン等を行い、初回治療の方向性を決めることが膀胱腫瘍外来の一つの役目です。
非筋層浸潤膀胱腫瘍では、経尿道的な内視鏡手術を行い、病理所見によって経過観察したり、抗癌剤やBCGの膀胱内注入療法を併用することもあります。非浸潤癌で内視鏡的に完全切除した場合でも膀胱癌は再発を繰り返しやすい性質があり外来での定期膀胱鏡検査などが必要です。
浸潤性膀胱腫瘍の場合、膀胱全摘除術を中心に治療を進め、進行の度合いによっては全身化学療法や放射線療法などを併用した集学的治療を行います。当科では膀胱全摘除術などの開腹手術、全身化学療法、放射線治療を患者さんの病状に合わせて行っています。
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副腎腫瘍
高血圧や糖尿病など、内科的疾患の精査中、あるいは健診などで副腎腫瘍の指摘を受ける場合があります。副腎は様々なホルモンを分泌する臓器ですが、副腎腫瘍にはホルモンを過剰分泌するタイプと、非分泌型に大別されます。腫瘍の大きさや、ホルモン活性の程度により手術適応となる場合があり、当科では腹腔鏡下副腎摘除術を行っています。
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腎腫瘍
腎癌(腎細胞癌)を中心に、良性の腎腫瘍を含めて診断および治療を行っています。腎癌の治療は、手術治療を中心に、現在は腹腔鏡下手術を積極的に行い、患者さんの負担軽減を心がけています。小さな腎癌であれば腎部分切除により、腎機能の温存も可能です。また病気の進行応じて、インターフェロンや分子標的薬などを用いた集学的な治療も行っており、すべての病状に対応可能です。
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精巣腫瘍
精巣腫瘍は若年男性に好発する、比較的稀な疾患です。症状は痛みを伴わない陰嚢 内容の腫大やしこりが主ですが(痛みを伴うケースもあります)、既に転移を起こしていると様々な全身症状が出てきます。診断は患部の触診と超音波検査、レントゲン検査(CTスキャン、胸部単純撮影)、血液中の腫瘍マーカー測定などを行います。治療 は第一に精巣を精索とともに摘除します。その後、摘出病変の病理診断と病期診断に 基づいて方針を決めています。治療方法として、抗がん剤による化学療法、手術療法、放射線療法があり、これらが組み合わされることもあります。また診断時に転移 のない病期Ⅰの患者さんでは、経過観察も行っています。近年では化学療法の進歩に伴い、転移を有する進行症例に限っても80%以上で根治しています。一方で、こうした治療に抵抗する難治症例も存在し、更なる治療成績の向上が望まれます。現在、こうした症例に新規抗がん剤の使用も可能となり、良好な治療成績を治めています。
精巣腫瘍の予後は、病期分類、病理分類により大きく異なります。診断時に転移の ない症例では極めて良好ですが、転移の大きさや数、部位によっては、根治の得られない症例もあります。また、一般にセミノーマより非セミノーマの方が予後不良であるとされています。当科での最近15年の治療成績は5年生存率で見ると、セミノーマでⅠ期100%、Ⅱ期100%、Ⅲ期80%であり、非セミノーマでⅠ期100%、Ⅱ期87.5%、Ⅲ期85.7%でした。
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腎移植・腎機能
小児から成人までの慢性腎不全の患者さんの保存的治療、透析療法(血液透析・腹膜透析)、腎移植療法(生体腎移植・献腎移植)のすべてを施行しています。腎不全に関することなら何でも相談してください。
1987年から開始して以来、生体腎移植71例、献腎移植25例の合計96例の腎移植を施行しています。夫婦間移植、糖尿病レシピエントに対する移植、ABO血液型不適合移植などにも取り組んでいます。生体腎移植の1年生着率は94%、5年生着率は83%、10年生着率は62%です(2010年までの成績).献腎移植の1年生着率は97%、5年生着率は76%、10年生着率は44%(2010年までの成績)です。
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排尿機能
排尿機能外来の対象症状・疾患としては、過活動膀胱、不安定膀胱、頻尿、尿失禁、排尿 困難、夜尿症、神経因性膀胱等の他、頻尿・排尿痛症候群(間質性膀胱炎)、慢性前 立腺炎、前立腺症、前立腺肥大症等を扱っています。
排尿外来では、排尿機能検査(尿流検査、残尿検査、膀胱内圧検査、排尿日誌など)を行い、排尿障害の原因を探索し、適切に治療することを目的としております。
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不妊症・性機能
不妊において男性側因子の関与は40〜70%であると言われています。当科では種々の原因による男性不妊症の診断および治療を行っています。この中で手術により造精機能の改善が期待できる精索静脈瘤に対しては、局所麻酔下に低侵襲で行える低位結紮術を施行しています。また産婦人科と連携し、顕微授精に供する精巣上体や精巣よりの精子採取を行っています。
男性ホルモンの分泌は間脳-下垂体-精巣系のホルモンバランスより制御されており、この系のいずれかに障害を来すと二次性徴が欠如したり、男性ホルモンの低下による種々の症状を引き起こします。原因には染色体異常による先天的なものや下垂体手術後など後天的な原因によるものがあり、当外来ではその診断と治療を行っています。障害部位により下垂体ホルモンあるいは男性ホルモンの補充を行います。
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尿路結石
尿路結石は頻度の高い疾患で、生涯罹患率は約5%といわれています。本外来では、腎臓、尿管、膀胱の尿路結石に対しての診断、治療、経過観察を行っています。自然排石が期待できない結石に対しては、最新の内視鏡およびホルミウムレーザーを用いた経尿道的結石破砕術を中心に治療を行っています。
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小児泌尿器
小児泌尿器は、停留精巣、水腎症、膀胱尿管逆流症など、手術による治療が必要な先天性疾患が対象となります。多くの患者さんが小児科からの紹介という形で受診されています。停留精巣、膀胱尿管逆流症を中心に、年間20例程度手術を行っています。小児科、麻酔科などと連携し、安全に手術が行えるよう十分に配慮しています。当院で手術ができない非常にまれな疾患については、他の病院を御紹介することもあります。
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男性更年期
40代以後起こってくる、男性機能の低下や不定愁訴の中には男性の更年期障害があります。近年、加齢に伴う血中男性ホルモン低下に基づく症候群として、LOH症候群:late-onset hypogonadism syndromeと呼ばれ、注目されています。問診や血中男性ホルモン濃度を測定して体全体の状態を評価することと、必要であれば精神科の先生と相談しつつ薬物やカウンセリングで治療を行います。また血中男性ホルモンが低い方ではホルモン補充療法により症状の改善が期待できますので、相談に来院されてはいかがでしょうか。